2025年7月7日月曜日

落雷により故障した給湯器の基板➁ ノーリツ GT-2450SAWX-2

 
落雷により故障した給湯器の基板 ノーリツ GT-2450SAWX-2


注意:この記事の内容を鵜呑みにし、事故や損失を招いた場合でも当方は一切の責任は負いかねます。自己責任でお願いします。


電子機器分解シリーズです。







・電源基板




「YG802C06」 富士電機 YG802C06 SBD 2素子入りショットキーバリアダイオード VRSM:60V Io:10A
疑似共振RCC2次整流用SBDです。

「K3563」 東芝 2SK3563 Nch MOSFET VDS : 500V ID : 5A
疑似共振RCC駆動用MOSFETです。

白色のトランスがコントローラ用の疑似共振RCCトランスです。



「D3SBA60」 新電元 D3SBA60 ダイオードブリッジ 600V 4A
落雷により故障したダイオードブリッジです。
サージ電流が流れたことで4素子のうち1つが死んでいます。



YコンとXコン
古い基板なので安全規格認定なしのAC125V耐圧のフィルムコンデンサが使われています。
今の時代はAC100VであってもAC250V耐圧でサブクラスX2のコンデンサが使われています。

Yコンは安全規格認定あり(X1, Y2)のものを使用しています。
そのおかげで、誘導雷によるコンデンサの破壊は防がれました。







「K3611」 富士電機 2SK3611 Nch MOSFET VDS : 250V ID : 14A

43Vシロッコファン電源の非絶縁降圧コンバータ用MOSFETです。

黄色の小さなトランスはこのMOSFET駆動用のゲートドライブトランスです。
画像右横のトロイダルコイルがこの降圧コンバータ用のインダクタです。




「YG902C2」 富士電機 YG902C2 FRD 2素子入りファーストリカバリダイオード VRRM:200V Io:10A
43Vシロッコファン電源の非絶縁降圧コンバータ整流用FRDです。



「KIA 78M12」 KEC KIA78M12PI 3端子レギュレータ 12V 0.5A

シロッコファン12Vサブ電源兼TL594電源用です。
この12Vレギュレータの入力は疑似共振RCCから来ています。



ところどころはんだボールが見られます。
軽く見た感じ3か所ほどあります。
はんだボールの位置によっては、事故が起こりやすくなるので注意が必要です。




「TL594」 TI TL594 PWMコントローラ
TL494の高精度リファレンス電圧生成版のようです。
43Vシロッコファン電源の非絶縁降圧コンバータ用です。








疑似共振RCCのトランスの下にびっちり回路が込められています。
個人的にはトランス直下は漏れ磁束の影響が出やすいため、パターンや部品の配置を避けたくなります。
トランスはEIコアとなっていてEの部分が基板側となっています。RCCの場合コアにギャップを入れることが多いので、ギャップ部分を基板から離すようにしているので、
トランス直下に部品を配置しても良しとしたのでしょうか。

グランドの絶縁距離の確保が足りないこともあり、よっぽどサイズ制約が厳しかったのでしょう。表面実装部品のリフローはんだ付けは、部品の向きやはんだ流れパターンなどの配置制約が厳しいのでこのようになってしまったのかもしれません。

大電流経路に入れるスリッド(コンデンサの足付近等)にはこだわりを感じるのでいいですね。







・コントローラ基板


ウレタン樹脂で埋められています。
















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落雷により故障した給湯器の基板➀ ノーリツ GT-2450SAWX-2

 
落雷により故障した給湯器の基板 ノーリツ GT-2450SAWX-2


注意:この記事の内容を鵜呑みにし、事故や損失を招いた場合でも当方は一切の責任は負いかねます。自己責任でお願いします。


電子機器分解シリーズです。

落雷によって起きた誘導雷により給湯器が壊れてしまいました。
家の電化製品の中で故障したのはこの給湯器だけでした。給湯器は必ず接地して使う機器なので落雷等で壊れやすい機器の一つでもあります。

直撃雷の場合は、家電が全滅することが多いですが、誘導雷の場合は一部の機器だけ壊れるケースがあります。
今回は給湯器だけということもあり、その原因を探ってみました。故障した基板の様子を見てみます。

なお、修理業者によると、付近一帯の複数の家庭の給湯器が壊れてしまったそうです。


画像の枚数が多いのでページを分けます。


※画像の悪用の抑止のため、ウォーターマークを入れています。


基板表面の外観の異常は、電源基板のヒューズの激しい溶断ぐらいです。
ヒューズ管内部で溶断後にもアーク放電が起きた形跡があります。
ヒューズのガラスに多数のクラックが入っていて爆散寸前だったと思われます。




ヒューズの溶断能力を超えてガス放電管となってしまったのでしょうか。




XコンやYコンに外観的異常は見られません。






電源基板の絶縁ケースを見てみます。
2か所ほど金属蒸気の飛散跡があります。
また、過熱で剥離したレジストが散乱しています。



スパーク跡➀




スパーク跡➁



剥がれ落ちたレジスト



・電源基板


2EBT-A
2EBT
回路構成はPFCなしの疑似共振型RCCと非絶縁降圧DCDCコンバータです。
電源基板にはバリスタやアレスタは見られません。
コントローラ用のAC100V→DC15Vは絶縁型の疑似共振型RCCで、ファンモータ用のAC100V→DC43Vは非絶縁降圧DCDCコンバータです。
ファンモータの電源は非絶縁なため、落雷による故障が多いそうです。
落雷後にファンモータが故障していなくても、絶縁破壊が起きている場合があるので、個人での修理の際にはファンモータも交換したほうがよさそうです。





基板裏面を見てみると、1か所大きな焼損が見られます。
また、過電流による過熱でパターン剥離も起きています。



絶縁破壊が起きた場所です。
ダイオードブリッジの-端子とYコン接地端子との間に放電跡があります。



アーク放電により、はんだが飛び散っています。




フレームグランドパターンのレジストがはげ落ちています。
過電流による急激な加熱によりレジスト-銅箔間の水分が一気に気化して剥離してしまったのでしょうか?
パターン幅は1mmです。
数μ~数百msの一瞬のパルス電流で焼損してしまうことを考えると、ピーク電流は数百A以上にもなりそうです。

このフレームグランドパターンは右側の3つのYコンのみへ接続されています。



フレームグランドの表面実装0Ωジャンパ抵抗が焼損しています。
ジャンパ下には信号線が通っています。
1つは無接続、もう一つはRCCフィードバック用フォトカプラのカソードおよびシャントレギュレータのカソードへ接続されています。
スタンバイ制御信号なのでしょうか?

個人的にはフレームグランド線を表面実装のジャンパ抵抗で信号線をまたぐ設計は避けたくなります。





テスタで焼損したジャンパ抵抗の導通確認をしたところ、高抵抗を示しました。
3216サイズのジャンパが無残に焼け焦げています。
よく見ると、はんだが蒸発してフィレットが消えています。











・故障原因

AC100VのL側と接地の間に誘導雷により生じた数kV以上ものパルス電圧が印加され、ダイオードブリッジの-端子とYコンFG端子(接地)の間で絶縁破壊が起こったようです。
写真では分かりにくいですが、
ダイオードブリッジの-端子先端とそのフィレット面に放電跡あります。
Yコンの方はフィレット面に放電跡あります。

この絶縁破壊が起きた場所のパターン間のクリアランスは2.5mmほどとなっています。
単純なパターン間の放電ではなく、電界強度が高くなりやすいリード端子の先端から放電が開始し、後にアーク放電へ移行したと考えられます。
ポイントは、この場所がほかの場所に比べ電界が集中しやすい状態ということです。
この箇所はFG間までのリード端子同士の距離が基板内で最短となっています。
おそらくコロナ放電→アーク放電へ移行し焼損してしまったのでしょうか?

単純に定値以上の絶縁距離を保つような設計では、この事例のようにサージ電圧の印加により絶縁破壊を起こす場合があります。




この給湯器の電源基板にはいくつかの問題点があります。
・電源ラインとフレームグランドパターン・リード端子間の絶縁距離が足りず、基板の絶縁破壊電圧がバリスタ+アレスタの降伏電圧より小さい。
・フレームグランドパターンと絶縁2次側のパターンとの間のクリアランスが足りない。
・フレームグランド配線をジャンパ抵抗でジャンピングする。

バリスタやアレスタは、スイッチング電源ユニットの前段にある漏電ブレーカーに入っています。

やはり一番の問題は、基板の絶縁破壊電圧がバリスタ+アレスタの降伏電圧より小さいことでしょうか。

漏電ブレーカを分解してみます。




OMRON
K6S-8A2-1




特に変哲もない単純な構成です。
電源ラインと接地間のサージ吸収は、バリスタとアレスタの直列回路で構成されています。
基板外観には特に異常は見られません。

本来はこっちの方が壊れてほしかったですね。








「ZNR V14271U」 松下 ERZV14D271 バリスタ
ブレーク電圧 : 247~303V




「242 04J」 岡谷 RA-242M-V7 ガラス管タイプ ガスアレスタ
ブレーク電圧 : 1920~2880V


激しな放電跡は見られません。電極にかすかに放電跡が見えるような気もしなくはないです。
 ガスアレスタが放電する前に電源基板のリード間で放電してしまったのでしょう。


合計のサージブレーク電圧は2~3kVほどです。
大気の絶縁破壊電圧は3kV/mmと言われています。
絶縁破壊を起こした箇所のパターン間距離は2.5mm、絶縁耐圧は7kV前後はあると思われます。
ダイオードブリッジのリードとYコン側ランド間の距離は4mmほどですので、絶縁耐圧の最悪値は4kVほどでしょうか。

電源ラインとフレームグランドパターン・リード端子間の絶縁距離がぎりぎり足りず、基板の絶縁破壊電圧がバリスタ+アレスタの降伏電圧より小さくなってしまったと思います。




放電跡は見られません。






「1702」 NEC μPC1702 UPC1702 漏電遮断器制御用增幅回路



背面カバーはきれいな状態です。



・故障箇所

外観の異常個所は、ヒューズの溶断、ジャンパ抵抗の焼け、パターンレジストの剥離です。

外観に異常がなく故障している部品はダイオードブリッジです。





・故障の対策
一番良いのはやはりゴロゴロ鳴り出したら給湯器のコンセントを抜くことでしょう。
ただ、この事例はサージ周りの回路設計が甘いことで引き起こされた故障なので、設計面での対策はできると思われます。今回レベルの誘導雷くらいでは壊れないようにしたいですね。


この基板の場合の対策事例を示します。
・接地と1次側の距離は最低6~7mm以上確保する。リード線がある部分はよりクリアランスを確保する。接地と2次側もなるべくクリアランスを確保する。また、ギャップ間のパターンに丸みを付けたりして電界の集中を防ぐ。
・電源基板のフレームグランドのコネクタは2次側ではなく1次側コネクタもしくはねじ取付で接続する。
・電源基板を金属筐体に入れ、筐体を接地する。
・サージ吸収素子は電源基板上に乗せる。
・フレームグランド(接地)パターンは太くする。電源基板などの接地パターンには表面実装のジャンパを使わない。




個人レベルでサージ対策をしたい場合はやはりSPDを取り付けるのが良いでしょう。
ただし、アースの取り回しやSPD挿入位置が極めて重要になります。単純に家中バリスタだらけにしてもほとんど効果がない場合もあります。
パルス状のサージ電圧の流入対策は、経路の特性インピーダンスや配線距離に依存するので難しいところです。



画像の枚数が多いのでページを分けます。







・参考資料

松田 純一    山本 拓也
特集「解析評価技術」 誘導雷サージの発生メカニズムと対策
松下電工技報(Vol. 55 No. 4) 2007 pp.77-82







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2025年6月28日土曜日

電卓 三和プレシーザ Precisa GS-12M 卓上計算機の分解

 
電卓 三和プレシーザ Precisa GS-12M 卓上計算機の分解

注意:この記事の内容を鵜呑みにし、事故や損失を招いた場合でも当方は一切の責任は負いかねます。自己責任でお願いします。


電子機器分解シリーズです。

本機は12桁の電卓(卓上計算機)です。
表示部はGS-12で使われていたエルフィン管?エイトロン管?ではなく蛍光表示管が使われています。


計算を担うロジック部のICはまとめられて3つとなっています。






「MA8603 0528」 三菱 詳細不明 MA8603
多くの端子がMA8604やMA8605へ接続されています。
CPUに相当するロジックが入っているのでしょうか?


「MA8605 0513」 三菱 詳細不明 MA8605
VFDセグメントドライバ兼キースキャンドライバとして使っている2個のTM4352Pへ接続されています。
役割的にIO担当でしょうか?


「MA8604-03 9080」 三菱 詳細不明 MA8604-03
MA8604の後ろの数字は別のバージョンのものも存在します。

MA8603とMA8605は、他のメーカの電卓にも採用されています。
これらの電卓にもMA8604が使われていますが、後ろの数字は異なることが多いです。
各社電卓の機能が微妙に異なることから、MA8604はROMもしくは機能ごとに合わせたカスタムゲートの可能性が高いです。



「TM4352P メ」 東芝 TM4352P 6回路入りトランジスタアレイ
ICのロット捺印がカタカナです。"ヌ"にも見えますが"メ"の上に棒があります。







「M58602-81 0532」 三菱 詳細不明 M58602-81
VFDエレメントドライバとして使っている2個のTM4352Pへ接続されています。
7セグデコーダでしょうか?


「M58212P 1311」 三菱 詳細不明 M58212P 
M58602の端子のいくつかはM58602へ接続されています。





「C372 O」 東芝 2SC372-O NPNトランジスタ  VCE:30V IC:100mA





「C1014」 三菱 2SC1014 NPNトランジスタ  VCE:40V IC:1.5A

「A628A」 三菱 2SA628A PNPトランジスタ  VCE:-60V IC:100mA
足が金メッキされています。




「FUTABA DG10Q1」 双葉 DG10Q1 VFD 7セグ 蛍光表示管 グリッド付き
伊勢電や双葉の単管VFDの型番英字2文字の後ろの数字は管径を表していることが多いです。
このVFDのフィラメント電圧は管1つにつき0.7~0.8Vほどです。
12個のVFDのフィラメントはすべて直列になっています。



























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Precisa GS-12M 
GS12M
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おわり