2021年1月17日日曜日

プリウスのインバータ 分解 2代目 (NHW20)

電子機器の分解一覧


プリウスのインバータ(PCU)分解

2代目プリウス(NHW20)のインバータを分解してみました。



前半は分解中の画像を、
後半では各モジュールの使い方を少しだけ紹介します。

※この記事で得た内容についてはすべて自己責任でお願いします。この記事によって発生した損害や事故について、当方は責任を負いかねます。(責任を負いません)



















・ブーストコンバータ用IGBTモジュール

3代目プリウスのIGBTモジュールは、ブーストコンバータIGBTと3相インバータIGBTが
一体となっていましたが、
2代目プリウスの場合は、ブーストコンバータIGBTと3相インバータIGBTが分かれています。






PM400DJA120
三菱製の特注品のようです。
データシートは見つかりませんでした。
400A,1200V品でしょうか?


このIGBTモジュールはさらに分解することができます。




ゲート駆動回路が入っています。

ゲートドライバICは三菱製です。
データシートは見つかりませんでした。

海外の方がこのIGBTモジュールの使い方を説明しているページがあったので、
参考にしてみます。

どうやら12Vの電源とPWM信号を与えてあげれば駆動できるようです。
詳しくは上記リンクをたどってみてください。
(以降のモジュールのピンアサインも上記サイトのマニュアルを参考にしています。)




・コネクタ
右上から左上にかけて、1番~8番ピンで
右下から左下にかけて、9番~16番ピンです。

まだ仕様はよくわかっていませんが、表にしてみました。(間違っているかも)
ピン番号の部分の色がケーブルの色に対応しています。

8 7 6 5  4   3  2 1
IGCT GND CPWM OVH VL CT NC NC
+12V GND Boost
converter
PWM
switch
signal
Motor
inverter
over
voltage
signal
Boost
converter
input
voltage 
Boost
converter
temperature
sensor
                         
電源 グランド ~PWM

入力
0~12V
のPWM
昇圧後
過電圧

入力信号?
(メイン
インバータ
IGBTの
OVH
と接続)

5Vで通常?
0Vで過電圧?
(未検証)
昇圧前の
電池電圧

出力信号?
IGBT
モジュール
の温度

出力信号?




16 15  14   13   12 11 10 9
NC CSDN GCNV FCV OVL NC NC (VB)
            shutdown
signal 
GND fail 
signal
Boost 
converter
over 
voltage
signal
                        Boost 
converter 
input 

シャットダウン
信号

入力
L:ON
H:OFF
グランド エラー
信号?

出力信号?
昇圧前
過電圧

出力信号?


昇圧前
の電源
に接続
(+201.6V)


独自のシリアル通信などを一切使っていないため、テスラコイルなどに容易に流用できそうです。



・使用例(Lチカ)
PWM入力のレベルは0~12Vの入力が必要なため、
マイコンなどで制御するには5->12Vへのレベルシフト回路が必要になります。

今回はファンクションジェネレータを用いて1HzのLチカをしてみました。
(駆動している様子がわかりやすいため)

7,14番ピンはグランドに、8番ピンは+12V電源に接続します。
5番ピン(OVH)には+5Vに接続して非「過電圧」信号を入力します。

6番ピン(CPWM)の
PWM入力は、ファンクションジェネレータを用いて0~12Vの矩形波を入力します。
(PWMは0-10Vではスイッチングできなかったので12Vまでかけています。)

回路図






・ブーストコンバータ用インダクタ

ブーストコンバータ用のインダクタです。
3代目プリウスのインバータのインダクタはシリコーンコーキングで筐体にガッチガチに固定されていましたが、2代目ではネジで別部品として固定されています。

インダクタの箱部分にもシリコーングリスが塗られており、相当発熱するようです。


約375μHあります。
相当電流を流せそうです。


・コンデンサ

低圧側(201.6V)・高圧側の平滑とスナバコンデンサが一体となっています。




低圧側はDC600V,282μF、
降圧側はDC600V,1130μF、
ブーストコンバータ用IGBTのスナバ(低圧側)はDC750V,0.1μF
となっています。

また、低圧側のコンデンサ端子間には放電用抵抗が並列に接続されています。
27KΩのチップ抵抗が5個並列で、それが12個直列になっており、
64.8KΩとしています。

・メインモータ・ジェネレータ用IGBTモジュール

EVモータとジェネレータのIGBTモジュールです。
これもブーストコンバータ用IGBTと同様、ゲートドライバと一体になっています。
型番はありません。








・コネクタ
右上から左上にかけて、1番~14番ピンで
右下から左下にかけて、15番~28番ピンです。

仕様はよくわかっていませんが、基板コネクタ部分のピンアサインを表にしてみました。(間違っているかも)
ピン番号の部分の色がケーブルの色に対応しています。

14 13 12 11 10 9(黄) 8 7 6 5 4 3 2(白) 1
IGCTGIVBGIVAGIWBGIWAGWUGVUGUUGIVTGFIVGSDNMIVTMFIVMSDN
+12VGenerator
'V'
phase current
Generator 
'V'
phase current
Generator 
'W'
phase current
Generator 
'W'
phase current
Generator
switch
'W' 
signal
Generator 
switch 
'V' 
signal
Generator 
switch 
'U' 
signal
Generator
inverter
temperature
sensor
Generator
inverter
fail
signal 
Generator
shutdown
signal
Motor
inverter
temperature
sensor
Motor
inverter
fail
signal 
Motor
shutdown
signal 
電源ジェネレータ
V相電流
B
出力
ジェネレータ
V相電流
A
出力
ジェネレータ
W相電流
B
出力
ジェネレータ
W相電流
A
出力
ジェネレータ
W相
~PWM入力
L:約4V?
H:約14V?
ジェネレータ
V相
~PWM入力
L:約4V?
H:約14V?
ジェネレータ
U相
~PWM入力
L:約4V?
H:約14V?
ジェネレータ
IGBT
モジュール
の温度

出力信号
ジェネレータ部
IGBT
エラー
信号?

出力信号
ジェネレータ部
シャットダウン
信号

入力
12V:ON
0V:OFF
モータ
IGBT
モジュール
の温度

出力信号
モータ部IGBT
エラー
信号?

出力信号
モータ部
シャットダウン
信号

入力
12V:ON
0V:OFF

282726252423222120191817(紫)1615
GIMV
(GINV)
MIWAMIWBMIVAMIVBNCNCNCMWUMVUMUUVHOVHGND1
GNDMotor
'W' 
phase
current
Motor 
'W' 
phase 
current
Motor 
'V' 
phase 
current
Motor 
'V' 
phase 
current
Motor  
switch  
'W' 
signal
Motor  
switch  
'V' 
signal
Motor  
switch  
'U' 
signal
Inverter
condenser
voltage
monitor
Motor 
inverter 
over 
voltage 
signal
GND
グランドモータ
W相電流
A
出力
モータ
W相電流
B
出力
モータ
V相電流
A
出力
モータ
V相電流
B
出力
モータ
W相
~PWM入力
L:約4V?
H:約14V?
モータ
V相
~PWM入力
L:約4V?
H:約14V?
モータ
U相
~PWM入力
L:約4V?
H:約14V?
昇圧後の
コンデンサ
電圧

出力信号?
昇圧後
過電圧

出力信号?
(ブースト
コンバータ
IGBTの
OVH
と接続)
グランド

ブーストコンバータ用IGBTと同様、
独自のシリアル通信などを一切使っていないため、vvvfインバータなど容易に組めそうです。


・使用例(3相かご型誘導電動機の駆動)
3相PWM入力のレベルは0~14V?の入力が必要なため、
マイコンなどで制御するには5->12Vへのレベルシフト回路が必要になります。


今回はジェネレータ部のIGBTで3相モータを回してみました。


15,28番ピンはグランドに、14番ピンは+12V電源に接続します。
4番ピン(GSDN)に+12Vに接続してジェネレータ部IGBTを有効にして、
1番ピン(MSDN)にGNDに接続してモータ部IGBTをシャットダウンしています。

7,8,9番ピン(GUU,GVU,GWU)の
3相PWM入力は、TD62003APGを用いて5->12Vへレベルシフトシフトしています。

18,19,20番ピン(GUU,GVU,GWU)は今回は使用しないため、GNDに落とします。


モジュール周りの回路図










・エアコン用3相インバータ回路(背面)

背面の基板の半分がエアコンのコンプレッサのインバータ回路になっています。
マイコンで制御しているようです。


左側6つのIGBT(GT30J324,30A,600V)が3相インバータ用素子です。
右側4つのMOSFET(2SK1517,20A,450V)が車内電源コンバータ用素子です。

マイコンはルネサス(日立)のSH2(HD6437049L06F,マスクROM品)が使われています。




・コネクタ
右上から左上にかけて、1番~3番ピンで
右下から左下にかけて、4番~6番ピンです。

仕様はよくわかっていませんが、基板コネクタ部分のピンアサインを表にしてみました。(間違っているかも)
ピン番号の部分の色がケーブルの色に対応しています。

 3  2   1 
STB IG
(IGSW)            
GND               
A/C
communication
+12V
GND
ストローブ信号?
入力?
0~12V
電源 グランド


 6  5   4 
TOECU
(ITE)
TOINV
(ETI)
CLK
A/C 
communication
A/C
communication
A/C 
communication
シリアルデータ
出力?
0~12V
シリアルデータ
入力?
0~12V
クロック
出力?
0~12V

信号は独自のシリアル通信のようです。
使うには解析が必要なようです。
google先生で「ETI ITE CLK」と検索すると、ヒントが得られるかも。

IGBTにGT30J324(600V,30A,最大動作周波数 50 kHz)が、
ゲートドライバにIR2113Sが使われています。
部品取りとして使えそうです。


・車内12V電源回路(背面)

背面の基板のもう半分が車内電源用のフルブリッジコンバータ回路になっています。
4つのMOSFET(2SK1517,20A,450V)で高周波トランスを駆動、
201.6Vから12Vに変圧します。




スイッチング用のICには、ATX電源などでよく使われていたμPC494G(TL494)が使われています。
GDTを介して4つのMOSFETを駆動しています。
整流ダイオード(TS906C2,20A,200V)は3つを並列にして使用しているようです。






・コネクタ
右上から左上にかけて、1番~5番ピンです。

仕様はよくわかっていませんが、基板コネクタ部分のピンアサインを表にしてみました。(間違っているかも)
ピン番号の部分の色がケーブルの色に対応しています。

 5 (橙)  4 (青)   3 (茶)   2 (灰)   1 (黄)
IGCT NODD ID1
(IDH)
VLO S
+12VDC / DC
movement
monitor
or stop
request signal 

Two-stage
selector
signal ?

電源入出力?
ON/OFF制御用?
不明
出力?
何かの
選択信号?
入力?
+12V
フィードバック?



フルブリッジ高周波トランス


コアは直径約1.8cm、幅約4.5cm、高さ約2.8cm、断面積約25.4m㎡でした。
PQ4528コア相当でしょうか。



インダクタ

インダクタンスは2.7μHあります。
コアは直径約1.5cm、幅約4.05cm、高さ約2.8cm、断面積約17.7m㎡、ギャップ長約2.8mmでした。
PQ4028コア相当でしょうか。





以上で分解レポートは終わりです。

強い素子たちがたんまり入っていました。

特にブーストコンバータ用IGBTは400A,1200Vと強く、
設計が難しい大型IGBTモジュールの絶縁ゲートドライバももれなく付いてくるのは
とてもお得ですね。

3つそろえて3相モーターぶん回すのもよし、
ハーフブリッジを生かし、PFCやテスラコイルのお供としても良いでしょう。
(高速スイッチングしたい場合はゲート周りを自分で設計する必要があります)

そろそろテスラコイルでも作ってみようかな…










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