2025年8月15日金曜日

新信濃変電所の見学 ※執筆中

新信濃変電所の見学 ※執筆中

注意:この記事の内容を鵜呑みにし、事故や損失を招いた場合でも当方は一切の責任は負いかねます。自己責任でお願いします。特に、当方は電力関係にはあまり詳しくないので、注意してください。
また、当方は東京電力や中部電力の関係者ではありません。

 
新信濃変電所の見学という貴重な機会があったので、変電所内の様子を記事にしてみました。
※施設の方に設備内の写真撮影とその写真のブログでの使用の許可をいただいた上で掲載しています。

この記事では設備の写真とともにその役割を軽く説明します。
基本的に参考となる資料をもとにした説明をしますが、一部憶測や不明な点も交えています。そのような部分は"?"を入れたりしています。
内容にミスがあると思いますがその際はご連絡いただけると助かります。

ページが多くなりそうなのでいくつかに分けます。

現在執筆中のため、ちょこちょこ更新になります。


稼働中の飛騨信濃FC1極側のバルブホール




新信濃変電所は長野県の朝日村にあります。

変電所自体は日本全国にたくさんありますが、この変電所は特殊で、主な役割は東日本と西日本で異なる周波数の交流の電力を相互に送り合うための設備「周波数変換所(FC)」となっています。

東日本は50Hzで西日本は60Hzとなっているため、直接系統に接続できません。
そこで、この「周波数変換所」で一度50Hzまたは60Hzの交流を直流に変換してから60Hzまたは50Hzの交流に変換する必要があります。

新信濃変電所のFCは、50Hz/60Hz変換設備である1号FCと2号FC、飛騨変換所に接続された50Hz/直流変換設備である飛騨信濃FCがあります。

1号FCは1977~2009年まで旧設備を使用し、2009年に設備更新をしました。
2号FCは1992年~現在まで使用しています。
そして、飛騨信濃FCは2021年の3月から運用しています。


ほかにも、新信濃変電所は、周波数変(FC)以外にも3つの揚水発電所と安曇幹線の接続するための変電所でもあります。

まとめると、新信濃変電所には
1. 1号FC
2. 2号FC
3. 飛騨信濃FC
4. 揚水発電所-安曇幹線変圧
の4つの施設があるということです。



・新信濃変電所の全体

※画像データが古いため、この写真には飛騨信濃FCがまだ存在しません。


・見学


見学ルート
時計回りに移動

見学ルートは、上記の図のように入り口から時計回りに進みました。


見学施設は、
・飛騨信濃FC 50Hz高調波フィルタ・電力用コンデンサ
・1号FC 50Hz高調波フィルタ
・飛騨信濃FC 制御室?
・飛騨信濃FC バルブホール
・飛騨信濃FC 変換用変圧器、直流リアクトル、直流フィルタ
・2号FC
・1号FC 変換用変圧器、直流リアクトル
です。

なお、2号FC内はEMI対策の関係上、携帯電話等の持ち込みが禁止されているため、写真はありません。


画像は2023年8月時点のものです。


・飛騨信濃FC 50Hz高調波フィルタ、電力用コンデンサ(154kV)

飛騨信濃FCの50Hz高調波フィルタは、3次(3ACF)、5次(5ACF)、11次(11ACF)、13次(13ACF)、高次(HPACF)の5種類あります。
電力用コンデンサ(SC)(調相するためのコンデンサ)は1群と2群の2つあります。

実際の設備構成は、「3ACF・5ACF」、「11ACF・13ACF・HPACF」、「SC 1群」、「SC 2群」のグループ(分路という)に分かれており、絶縁架台方式となっています。

飛騨信濃FCは、直流回線が2つあり、それぞれ「1極(4組)」と「2極(5組)」と呼んでいます。50Hz高調波フィルタも2セットあり、電力用コンデンサは1群2群 x 2セットとなっています。
つまり合計で4分路が2ブロックあるということです。計8分路を適時組み合わせることにより、高調波のカットおよび力率の改善を行います。

4つの分路を適時開閉しているのが154kV GISです。



ちなみに、分路リアクトル(ShR)(調相するためのリアクトル)も1群2群 x 2セットあり、飛騨信濃FC連系用変圧器の近くに設置されています。

画像が多いので別ページに置いておきます。



・飛騨信濃FC 電力用コンデンサ(SC)



飛騨信濃FCの154kV電力用コンデンサ(SC)です。
見学ルート付近に5組(2極側)1群SCと5組2群SCがあり、詳しく見ることができました。
絶縁架台方式となっており、電力用コンデンサが直列接続されています。
母線に近いコンデンサほど、対地電圧が高くなるため、絶縁架台が階段状になっています。
回路の詳細は不明ですが、「C-typeフィルタ」、「C型フィルタ」と呼ばれるものに近そうです。




・飛騨信濃FC 高調波フィルタ(ACF)

2極 3次・5次高調波フィルタ


飛騨信濃FCの154kV高調波フィルタです。

3次高調波フィルタ(3ACF)は、FCと交流系統が相互作用して発生する第3高調波を抑制するためにあるそうです。
5次高調波フィルタ(5ACF)は、当変電所以外の系統から流入する第5高調波を抑制するためにあります。
11次、13次、高次高調波フィルタ(11ACF、13ACF、HPACF)は、FCから流出する12N±1高調波(主に第11高調波、第13高調波、第23高調波、第25高調波、…)を抑制するためにあります。[1]

3次と5次でひとまとめ、11次と13次と高次でひとまとめとしています。
異なる次数のフィルタコンデンサでも、同相の場合の電位差は母線と比較してもそれほど高くならないため、絶縁架台を一部を共用しています。
個々のコンデンサには小さな絶縁架台を用意し、全体として大きな絶縁架台を用意しています。

飛騨信濃FCのSCと同様絶縁架台式となっており、電力用コンデンサが直列接続されています。母線に近いコンデンサほど、対地電圧が高くなるため、絶縁架台が階段状になっています。

見学ルート付近には2極3ACF・5ACFがあり、少しだけ見ることができました。




以下、執筆中につき画像未配置



・1号FC 50Hz高調波フィルタ(ACF)


信濃1号FCの50Hz側275KV高調波フィルタ(ACF)です。
この部分の文献がそう多くはなく、あやふやな情報しか見つかりませんでした。

基本的な役割は「・飛騨信濃FC 電力用コンデンサ(SC)」と同じです。

1号FCは1977~2009年まで旧設備を使用し、2009年に設備更新をしました。

2009年の1号FCの更新では、
50Hz側の変換用変圧器、サイリスタバルブおよび直流リアクトルの更新を東芝が担当し、
60Hz側の変換用変圧器、サイリスタバルブの更新を日立が担当していました。

ただ、2009年の1号FCの更新の際、50Hz側および60Hz側の高調波フィルタの更新はしていないようです。[2]

しかし、その後ちょくちょく高調波フィルタの設備更新はしているようです。
1号FC50Hz側5次1号分路の更新事例
[日新電機技報 Vol. 60, No. 1 (2015.4) ][3]

ここまでを踏まえると、
基本的には同容量の設備かもしれません。

[日立評論1979年2月号:東京電力株式会社新信濃変電所周波数変換設備の概要 P83  ][4]
によると、分路リアクトル(ShR)と電力用コンデンサ(SC)は、275KV-22KVの変圧器を介した別の場所にあるかもしれないです。

設備構成に関してもあまり記述が無く、確実にある情報としては5次ACFと13次ACFが存在していることくらいです。
この区画には計5分路存在します。うち2つが5次ACFと13次ACFで、残り3つが何かというと、おそらく7次ACF、11次ACF、HPACFでしょう。



・飛騨信濃FC 制御室

いよいよ新設備の飛騨信濃FCの制御室です。
この設備では、飛騨信濃FCの制御や監視をしています。

建屋に入ってまず目に入るのが、飛騨信濃FCの状態を示す監視盤です。

飛騨信濃FCの電力融通容量は最大900MWです。
飛騨信濃FCの直流回線は2つあり、それぞれに交直変換設備が独立してあります。(双極1回線導体帰路方式)
直流相受電電圧は200KVまたは-200KVで1回線当たり最大2250Aの電流を流すことができます。
片方が故障しても450MWの電力融通ができるということです。


双極1回線導体帰路方式の利点はほかにもあり、この方式では小電力の融通も可能とします。
サイリスタバルブ式の交直変換設備の特性上、基本的には小電力の融通はできず、ある程度の電力の送電または受電が必要となります。
双極1回線導体帰路方式では、それぞれの回線の送受電の方向を逆にすることで、小電力の融通を可能にしています。
例えば、回線1極側では信濃→飛騨方向に101MW送電、回線2極側では飛騨→信濃方向に100MW送電するとすると、飛騨信濃FCでは信濃→飛騨方向に1MW送電したこととなります。

飛騨信濃FCの代表的な送電モードは、5つあります。
➀両極ともに信濃→飛騨方向へ電力融通
➁両極ともに飛騨→信濃方向へ電力融通
➂単極で信濃→飛騨方向へ電力融通
④単極で飛騨→信濃方向へ電力融通
⑤信濃→飛騨方向、飛騨→信濃方向へ電力融通

直流送電区間の線の送電線の数は計4本あり、内2つは帰線(GNDのようなものですが、対地電圧は場所によって数KVになる)となっています。
➀と➁の時の回線電圧は、1つの極で(200KV-0V)、もう一つの極で(-200KV-0V)となります。(0Vは帰線を表しています)
➂と④の時は、1つの極で(0KV-0V)、もう一つの極で(200KV-0V)または(-200KV-0V)となります。
⑤の時は、両方の極で(200KV-0V)または(-200KV-0V)となります。


飛騨信濃FCの電力変換効率は約97%(見学の際の質疑応答での回答)だそうです。
自作スイッチング電源や自作PCなど組み立てたことがある方なら、この変換効率の高さに驚くかと思います。すごい技術力ですね。


この飛騨信濃FCは現在、電力市場での運用がされています。
30分毎?(忘れてしまった)に電力融通量が変化するようです。





・飛騨信濃FC バルブホール

飛騨信濃FCの心臓部です。
ここでは50Hz 86KV↔直流200KV(-200KV)の変換を行っています。

この建屋は震度7にも耐えうるそうです。


・冷却装置室
ここでは、サイリスタバルブを冷却するための純水をヒートポンプで冷却するため部屋です。
ヒートポンプによって交換された熱は、バルブホール建屋の外にある冷却塔で放熱します。


・1極バルブホール

ここが交直変換をするためのサイリスタバルブがあるバルブホールです。



バルブホールではけたたましい音が鳴り響いていました。
例えるなら5倍くらい音量を上げた50Hz版のMRIでしょうか。
普段よく聞く50Hzのハム音とは違い、バリバリ音に近い音がします。
時間がたつにつれ音量がときどき変化していたので、電力融通量の増減があったのでしょう。
音の発生源はわかりませんが、おそらくバルブ回路にある可飽和リアクトル(アノードリアクトル)や隣接する交直変換用変圧器によるものなのでしょうか?



サイリスタの価格を伺ったところ、1つ約60万円ほどするそうです。

 



参考文献

[1]
飯村 美起,千葉 開,鴨志田 真一,小形 秀紀,内海 知明,中野 芳彦
飛騨信濃周波数変換設備の特長技術
最新の直流送電プロジェクト
[ⅰ]パワーグリッド,日立評論  Vol.102 No.02 214-221


[2]
村尾 武,島田 和義,相沢 仁士
電力系統用パワーエレクトロニクスシステムの最近の更新技術
東芝レビュー  Vol.63 No.12 (2008)


[3]
日新電機技報 
2017年の技術と成果 〔2〕電力用設備
日新電機技報 Vol. 63, No. 1(2018.4)


[4]
安田正行,桜井武一,加藤 寧,村岡春夫
小特集・直流送電技術
東京電力株式会社新信濃変電所周波数変換の概要
日立評論 VOL.61 No.2 (1979-2)





中部電力パワーグリッド
飛騨信濃周波数変換設備の運用開始について





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