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日産フーガ ハイブリッドインバータ(PCU)の分解
※この記事で得た内容についてはすべて自己責任でお願いします。この記事によって発生した損害や事故について、当方は責任を負いかねます。(責任を負いません)
日産フーガ ハイブリッドインバータ(PCU)の分解を分解してみました。
この車種のモータの最大出力電力は50kWで、電池の電圧は346Vです。プリウスのインバータのような昇降圧回路は入っていません。
上の基板がインバータのメインコントローラです。
下に黒く見えるのがフィルムコンデンサです。
構成は昇降圧チョッパなしの三相インバータ一組です。
「R5F71476FPV SH2」 RENESAS SH7147 SH2 32bitマイコン Flash:512kB, RAM:16kB
R5F71476BJ80FPV, R5F71476BD80FPV , R5F71476AK64FPVの何れかだと思います。
モータ制御用のマイコンです。
余談ですが、同じ車種のインバータでプログラムのバグがあり、リコールが出ているものがあります。ただ、このインバータが該当するかわかりません。
インバータのマイコンのROMはフラッシュメモリになっているため、プログラムの修正は比較的容易だと思います。
「TB 9004FNG」 東芝 TB9004FNG ウォッチドッグ付き5Vレギュレータ 車載用
「A1741」 Renesas 2SA1741 PNP トランジスタ VCE:-60V, Ic:-5A
「58L08F」 東芝 TA58L08F 8V LDO レギュレータ
「2403Z JRC」 JRC NJM2403-Z 2回路入りコンパレータ 広温度範囲品
「1431Q1」 TI TL1431-Q1 シャントレギュレータ
「S93C86 BD」 SII S-93C86B EEPROM 16kbit
「HC240 NXP」 NXP 74HC240PW 3ステートバッファ
IGBTモジュールのゲート駆動回路へ接続されています。
「82C250Y NXP」 NXP PCA82C250 CANドライバIC
「R5F2120 6KFP」 Renesas R8C/21 16bitマイコン Flash:32kB, RAM:2kB
ほとんどのピンがSH2マイコンへ接続されています。
「TAMAGAWA AU6803 137」 多摩川精機 AU6803 レゾルバ R/Dコンバータ
モータの回転角を検出します。
「8202Z JRC」 NJM8202Z NJM8202-Z 2回路入りフルスイングオペアンプ 広温度範囲品
レゾルバ励磁回路に使われています。
・フィルムコンデンサ
エポキシ充填部のサイズが15.5cm x 9.5cm x 4.5cmほどです。
松下電器 SH フィルムコンデンサ
DC600V
600μF + 1.13μF
表示上では600μF+1.13μFですが、実際は300μF+1.13μF+300μFです。
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300+1.13+300
温度センサが内部に埋め込まれています。
・IGBT部
IGBTモジュールが3つあります。
それぞれに電源が接続されています。
IGBTの三相出力部です。
ホールセンサ式電流センサが2つあります。
・IGBTモジュール駆動部
黒いチップ抵抗が11個直列に並んでいる部分が600μFのコンデンサの放電抵抗です。
その隣の青いチップ抵抗が4個直列に並んでいるのが高圧電源電圧監視用です。
画像上側がローサイド駆動回路、下側がハイサイド駆動回路です。
また、画像右側が駆動回路の電源回路です。
右上のフォトカプラとICが密集しているらへんが高圧電源電圧監やIGBT温度監視回路です。
ローサイド側の駆動回路のGNDは、中央のレグの駆動回路のみ基板上で電源GNDと接続されています。
端二つのレグのGNDは、中央レグのIGBTを通じ、それぞれのIGBTモジュールの高圧GNDから確保しています。
ゲート駆動回路はかなり凝った作りになっています。1アーム当たりのゲートドライブ回路の部品数が100を超えています。
トヨタのHVインバータは独自チップのゲートドライバを使っていますが、日産のこのインバータは市販品でゲートドライブ回路を構成しているようです。
設計したメーカーは不明ですが王手のIPMメーカーがかかわっているのは確かでしょう。とても美しいです。
「9121」 東芝 TLP9121 詳細不明 フィードバック用
「9114B」 東芝 TLP9114B ゲートドライブ用
フィードバック用のフォトカプラ出力は6つ直列になっているようです。
IGBTのゲート駆動回路はすべてフォトカプラで絶縁されています。
フィードバック用のフォトカプラもあります。
「AS2118 A137P IR」 IR AUIRS2118 ゲートドライバ
「2403Z JRC」 JRC NJM2403-Z 2回路入りコンパレータ 広温度範囲品
「1431Q1」 TI TL1431-Q1 シャントレギュレータ
「2901Z JRC」 JRC NJM2901-Z 4回路入り単電源コンパレータ 広温度範囲品
「A1649」 Renesas 2SA1649-AZ PNP 高速スイッチングトランジスタ VCE:-30V, Ic:-10A
「2902ZA JRC」 JRC NJM2902-ZA 4回路入り単電源コンパレータ 広温度範囲品
・基板全体
上記写真左側の4ピン コネクタ左から4~1番ピンとした時、
VCC, VCC, GND, GND
となります。
おそらくゲート駆動回路用電源端子でしょう。
電源電圧は不明ですが、12Vだと思います。
右側の12ピンコネクタはIGBTの電流・温度警告、高圧電源監視出力です。
詳細にはまだ調べていませんが、ゲート駆動回路用電源のON/OFFも兼ねていると思います。
単純な信号のやり取りしかしていないので、ゲートドライバ基板付きIGBTモジュールの流用は比較的簡単そうです。
DC346Vを用意すれば50kW級の三相インバータが
上記写真の8ピン コネクタ左から1~8とした時、
WL, WH, VL, VH, UL, UH, NC, COM
となります。
WL~UHがそれぞれのゲート駆動フォトカプラへ接続されています。
入力段でのアーム短絡保護等は特に無さそうです。・IGBTモジュール本体
3つの大きなモジュールが並んでいます。
モジュール1つが三相出力の1レグです。
IGBTモジュールのDC入出力端子です。
IGBTモジュールの型番は不明です。
600μFのコンデンサの耐電圧が600Vなので、IGBTのVCE maxは少なくとも600V以上だと思います。
横についているシールはロット番号でしょうか。
2561J2170
2561J21582561J2154
裏面はとてもきれいです。
この手のパワーモジュールは通常、IGBTチップと放熱板はアルミナ基板などで絶縁されていますが、このIGBTモジュールは絶縁されていません。
1つのモジュールには8つの半導体チップが載っています。
上の4つがフリーホイールダイオードで、下4つがIGBTです。
ハイサイドとローサイドともにIGBTとダイオードが2個ずつ並列されています。
左右でアームが分かれています。
IGBTのケースはPIOLAX製のようです。
1つのIGBT素子から5本線が出ています。
右端2本が温度測定用のダイオードです。一番右がカソード、その隣がアノードです。
真ん中の端子がIGBTのエミッタです。
一番左の端子がIGBTのゲートで、左から2番目の端子がセンスエミッタでしょうか。
左から1~13番ピンとして割り当てたとき、
G1, S1, E1, A1, K1, NC , C(共通), NC, G2, S2, E2, A2, K2
となります。
・電流センサ
青チューブの電流センサ
HC-NB600V15PP5-
V8
NB600B
KOHSHIN
緑チューブの電流センサ
HC-NB600V15PP5-
U8
NB600A
KOHSHIN
青チューブのものがV相、緑チューブのものがU相の電流センサです。
甲神電気製です。
データシートは見つけられませんが似た型番から仕様を予測してみました。
シリーズ : [HC-NB]
定格電流[IF] : ±600A [600]
600A時の電圧出力 : オフセット電圧+1.5V? [V15]
電源電圧 : 単電源5V [PP5]
基本的な仕様は予測できたので、何かしら流用できそうです。
「8202Z JRC」 NJM8202Z NJM8202-Z 2回路入りフルスイングオペアンプ 広温度範囲品
よく見るとホールセンサが2つ入っています。
出力も2系統あるっぽいです。
「11BN」 詳細不明 ホールセンサ