SHARP 5R-DDH1 真空管の分解
注意:この記事の内容を鵜呑みにし、事故や損失を招いた場合でも当方は一切の責任は負いかねます。自己責任でお願いします。
残念ながら割れてしまった真空管を分解(解体)してみました。
同じ球が入手できれば真空管の標本を作ってみてもいいかもしれませんね。
!!!注意!!!
細かな作りが分かるように写真を多めに撮っておきました。100枚以上の写真があるため、通信量を気にする方は、気を付けた方がいいです。
あと、重複する写真もかなりあります。
この真空管は2極管2つ(双2極管)と3極管1つが入った複合管と呼ばれる真空管です。
主にTVのFM音声検波で用いられていたらしいです。
2極部2つでFM音声の検波を行い、3極部で音声増幅を行うようです。
真偽は不明ですが、上記例で言うと「ナショナルワールドシリーズ 14"トランスレス・テレビジョン受像機配線図(例)」の回路図上段6AL5(双2極管)とそのすぐあとの6AB8の三極部がこの5R-DDH1と同じ役割ということになると思います。
左右の銀色の金属板がそれぞれの2極管のプレートで、真ん中の灰色の金属版が3極管のプレートです。
構造を維持するための上下の白い板はマグネシア(酸化マグネシウム)を塗布したマイカ板です。
上部のリングは、ゲッターの材質(バリウムやアルミニウム等?)が入った入れ物で、真空引きしている最中にこのわっかを高周波加熱器で加熱するとバリウム蒸気がガラス管壁まで飛んでいきます。バリウム蒸気がガラス管壁まで到達すると、よく見る銀色の鏡のような状態へとなります。
マグネシアはこのバリウムの付着により電極間の絶縁性が損なうのを防ぐ役割があるようです。
中央の点3つが3極管のカソード(真ん中)とグリッドの支柱(カソードの両脇の点)です。
上部のマイカ板を取り外した様子。
2極管のプレートです。
4か所に穴が開いていますが、これはニッケル金属板をかしめて止めるためのもです。
かなり頑丈にかしめられており、分解する時にへにゃへにゃになってしまいました。
カソードから放出された電子が金属板中央の溝部分に向かいます。
少し変色しているのはなぜでしょうか?
白い棒が2極管のカソードです。
酸化ストロンチウムや酸化バリウムが主な材質のようです。
製造時には炭酸塩の状態(ペースト状)にしておき、真空引きする時にカソードを加熱して酸化物にするようです。
組立て時にこのペーストがプレートにつかないようにしなければならず、手作業では相当難易度が高いと伺えます。
三極部のプレートです。
2極部と同様、金属板をかしめています。
1枚の金属板でできています。
材質はアルミクラッド材が用いられています。
着磁性があるので、アルミクラッド鉄だと思います。
放熱性をよくするために外殻は表面処理がされています。
三極部の中身
試しに組み立ててみました。
手作業で非常に難易度高いです。
ヒータです。
3つの管の複合管なので、ヒーターもそれぞれ伸びていますが、この真空管のヒーターは全部直列になっているようです。
大気中で定格で通電させると加熱はしますが赤熱はしません。
3極部のグリッドは71か72回巻きぐらいあります。
等間隔で巻かれており、ピッチは210μmほどでしょうか。
参考資料
Mini-Museum of Japanese Radios/日本のラジオのミニ博物館
Radio Tubes After WWII/戦後のラジオ球
TV Tubes/テレビ球
Vertical Defrection and Video Amplifiers/垂直偏向管とビデオ増幅管
Page-Sound. FM Detector and Sound Tubes/TVの検波と音声増幅管
ゲッタ今昔物語(上)
南房 豊*
ゲッタ今昔物語(下)
南房 豊*
真空管技術の半導体への移転
Technologies of Vacuum tube transferred to Semiconductor
渡辺 治男
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