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サナーエレクトロニクス 電子式蛍光灯安定器 (A種) AN-1011-1 の分解と回路
注意:この記事の内容を鵜呑みにし、事故や損失を招いた場合でも当方は一切の責任は負いかねます。自己責任でお願いします。
秋月電子で販売されていた10W蛍光灯(FL10 管径25.4mmT8, 管長330mm)用の電子安定器です。
秋葉原店で20円で販売されていたので購入してみました。
この電子安定器は一部の遊技機(メーシー販売 パイジマ 等)に使われているようです。
似た品種にAN-1011 電子式蛍光灯安定器 (E種) があります。回路的には同一であると思われます。
AN-1011-1 電子式蛍光灯安定器 (A種)
サナーエレクトロニクス株式会社
適合ランプ FL10
電灯器具内用
100V 50/60Hz 1灯用
入力電力 10.5W
入力電流 0.21A
2次電流 0.23A
2次電圧 42V(負荷時)
2次短絡 0.53A
SANOR'e
「C4546」 サンケン 2SC4546 VCE:400V IC:7A NPNトランジスタ
ハーフブリッジとなっています。
手前に見えるエメラルドグリーンの巻き線のトロイダルトランスが、このトランジスタのベース駆動用の可飽和トランスです。
一応簡易的なLCRメータでインダクタンスを測定して10μHらしいと出ていますが、可飽和コアであるため詳細は不明です。
エメラルドグリーンのフィルムコンデンサが定常時共振用コンデンサ(0.022μF 400V)です。
赤茶色のフィルムコンデンサが始動時共振用追加コンデンサ(7500pF 1000V)です。
黄色のトランスが共振用インダクタ(1mH)です。
・回路図
・回路構成
回路的には可飽和トランスを利用した自励式のハーフブリッジ共振インバータです。
電球型蛍光灯によくみられる回路方式ですね。
トランジスタのベース駆動に可飽和トランスを使用しています。
このトランスの1次側入力は、蛍光灯への正弦波出力電流となっています。
この回路のポイントは、ベース駆動用トランスには可飽和コアを使って長期的に見たときに定電流となるようにしているところです。
可飽和コアを利用した回路といえばATX電源などでおなじみのマグアンプがよく知られています。可飽和トランスも基本的な原理はこれらと同じです。
蛍光灯出力電流が大きくなると、可飽和トランスのコアがすぐに飽和してトランジスタのベースに電流を供給する時間が短くなり、共振LCへのエネルギ供給少なくなります。
逆に蛍光灯出力電流が小さいと、可飽和トランスのコアが飽和するのに時間がかかるためトランジスタのベースに電流を供給する時間が長くなり、共振LCへのエネルギ供給が多くなります。
つまり、蛍光灯への出力電流の絶対値は長期的に見たとき定電流になるような挙動をします。共振用LCと蛍光灯の3素子は直列となっているため、蛍光灯に流れる電流は高周波の正弦波となります。蛍光灯はガス放電管であるため、管電圧は定電圧となります。
・起動回路
電源投入直後は発振していません。
抵抗R2(1MΩ)とR3(1MΩ)、コンデンサC3(0.01μF)、トリガーダイオードTD1により、発振が開始されます。
電源投入直後はどちらのトランジスタもOFFでかつ、トランスT1にも電流が流れていない状態です。
①コンデンサC3は、抵抗R2とR3により0Vから徐々に充電されます。
②コンデンサC3の端子電圧が[トランジスタQ1のVBE+トリガーダイオードTD1のブレーク電圧]に達すると、トリガーダイオードTD1が導通状態になります。
③トリガーダイオードTD1が導通であるため、コンデンサC3の電荷がトランスT1上の巻き線およびトランジスタQ1のB-E間を通り放電されます。
④トランジスタQ1がONとなり、L2とC4およびC5の直列共振回路へ電流が流れます。同時にT1下側の巻き線へ電流が流れるため、トランジスタQ1のベース電流を増加させます。
以降は持続的に発振します。
トリガーダイオードのブレーク電圧は特に調べていません。
・蛍光灯始動時
始動時には、蛍光灯の管内ガスへは電流が流れません。電源投入直後の始動時には、共振用コンデンサC4と共振用インダクタL2のほかに蛍光管両端のフィラメントと始動時用共振コンデンサC5が直列に入ります。
上記の回路図で言うと4→フィラメント→3→コンデンサC5→6→フィラメント→5となります。
つまり共振回路でエネルギーを消費する素子が蛍光灯のフィラメントのみとなります。フィラメントではあまりエネルギーが消費されず、始動時用共振コンデンサC5の両端の電圧は数百Vまで達します。(電圧波形と電流波形は正弦波状)
フィラメントが過熱されてかつ始動時用共振コンデンサC5の端子間電圧が放電開始電圧に達すると、管内ガス放電へと移行します。
・蛍光灯点灯時
ガス放電中の蛍光管端子電圧の絶対値はおおむね定電圧になります。
始動時用共振コンデンサC5は蛍光管の両端と並列に入ります。
上記の回路図で言うと4→蛍光管とコンデンサC5の並列→5となります。
蛍光管端子電圧の絶対値はおおむね定電圧(FL10の場合42~46Vなど)になることから、電圧波形は矩形波となります。電流波形は正弦波状です。
・改造するには
実は10Wの蛍光灯以外の蛍光灯(FL8やFL6など)にも使いたいと思い、回路を調べてみました。特にUV-EPROMの削除に使う6Wや8Wなどの小型の殺菌灯を点灯させるための安定器として使えると嬉しいです。
基本的に蛍光灯の場合、蛍光管に流す電流値によって形が決まります。
つまり、この安定器の出力電流のリミット値を変更すれば、別の形の蛍光灯にも使えるということです。
出力電流のリミット値を決めているのが、先の項で述べた可飽和コアを使ったトランスT1および、抵抗R4,R5、ダイオードD2,D3です。
例えば、出力電流を減らしたい場合には、トランスT1が磁気飽和しやすくなればよいということです。
トランスT1の磁気飽和が早く起こるようにするには、トランジスタのベース電流やダイオードD2やD1へ流れる順電流を減らせばよいということです。抵抗R4およびR5を調整すると良さそうですね。
この辺はおいおい実験してみます。
おまけ:蛍光灯のサイズと諸特性の一覧
参考 : JIS C 7617-2:2009
・FL グロースタート
種別 管径 管長 点灯時電圧 点灯時電流 口金 余熱電流
FL4 T5(15.5mm) 135mm 30V 0.162A G5 0.19A
FL6 T5(15.5mm) 211mm 44V 0.147A G5 0.19AFL8 T5(15.5mm) 287mm 56V 0.170A G5 0.25A
FL10 T8(25.5mm) 330mm 46V 0.23A G13 0.33AFL15 T8(25.5mm) 436mm 55V 0.30A G13 0.44A
FL20SS/18 T9(28.0mm) 580mm 59V 0.34A G13 0.53AFL20S T10(32.5mm) 580mm 58V 0.36A G13 0.53A
FL30S T10(32.5mm) 630mm 55V 0.61A G13 0.85AFL40SS/37 T9(28.0mm) 1198mm 108V 0.41A G13 0.63A
FL40S T10(32.5mm) 1198mm 106V 0.42A G13 0.63A
・FLR ラピッドスタート
FLR20S T10(32.5mm) 580mm 58V 0.36A G13
FLR40S/36 T10(32.5mm) 1198mm 96V 0.44A G13FLR40S T10(32.5mm) 1198mm 106V 0.42A G13
FLR110H/100 T12(38.0mm) 2367mm 142V 0.82A R17dFLR110H T12(38.0mm) 2367mm 159V 0.80A R17d
・FHF 高周波点灯専用
FHF16 T8(25.5mm) 588.5mm 64V 0.255A G13
FHF24S T5(15.5mm) 549mm 77±8V 0.295A G5FHF32 T8(25.5mm) 1198mm 128±10V 0.255A G13
FHF39S T5(15.5mm) 849mm 118±10V 0.325A G5
FHF54S T5(15.5mm) 1149mm 120±10V 0.455A G5FHF50 T8(25.5mm) 1498.5mm 142±10V 0.355A G13
FHF86 T8(25.5mm) 2367mm 216±20V 0.395A R17d
蛍光灯電流一覧
FHF86/RX T8(25.5mm) 2367mm 216±20V 0.395A RX17d
・FSR T6スリム
FSL30T6 T6(20.1mm) 692mm 105V 0.20A FaX6
FSL42T6 T6(20.1mm) 1002mm 150V 0.20A FaX6
FSL54T6 T6(20.1mm) 1305mm 197V 0.20A FaX6
FSL64T6 T6(20.1mm) 1559mm 233V 0.20A FaX6
・参考文献
・変形ハーフブリッジ形インバータにおける自励発振回路の解析
清水 恵一, 松尾 博文
長崎大学工学部研究報告 第31巻 第56号 平成13年1月 p63-p70
・日本工業規格 JIS C 7617-2:2009
直管蛍光ランプ−第2部:性能仕様
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