三洋 家庭用パーソナルカラオケ ON STAGE オンステージ Z-PK11G(S)の分解
注意:この記事の内容を鵜呑みにし、事故や損失を招いた場合でも当方は一切の責任は負いかねます。自己責任でお願いします。t
電子機器分解シリーズです。
本機はマイク型の家庭用カラオケマシンです。
マイクの柄の部分に装置を詰め込んでいます。
追加のチップ(物理ROMやフラッシュメモリ)を取り付けることで、曲の追加やUSB接続によるダウンロード曲の保存ができます。
この手のカラオケマイクは類似品が多くあり、中身がほぼ同じということも多くあります。
本カラオケマイクの中の基板のシルク印字の型番はED12000となっています。
ED~で始まるものは販売元が異なっていても製造メーカーは同じ可能性が高いです。
外観で見分けるポイントは、拡張カートリッジのコネクタ形状が以下の分解画像と同じであるかどうかを判断すると良いです。
専用ACアダプタ : DSR-0051-07 FUS80050F DC8V 0.5A
ICの生産年は2006年台が多いです。
メインコントローラはTIのDSP TMS320DM270 (ARM7内蔵)が入っていました。
「AIC32I TI 61W ZL8E」 TLV320AIC32IRHB ステレオオーディオコーディック
ADCとDACが内蔵されています。
「IMAGIS ISC5100 H12646 0646」 IMAGIS ISC5100 詳細不明
映像処理関係のLSIでしょうか?
多くの配線がDSPへ接続されています。
「SAMSUNG 646 K9F1G08U0A PIB0」 SAMSUNG K9F1G08U0A 128M*8bit 1Gbit NANDフラッシュメモリ
DSPのプログラムと内蔵楽曲データが格納されています。
「LVC139」 74LVC139 2bitデコーダx2
拡張チップのチップセレクト用だと思います。
・基板裏面
「DSP TMS320DM270 $4B 6AAJ61W」 TI TMS320DM270 ビデオ処理用DSP
DSPコアC54xTMと32bit ARM7 コア、プログラマブル画像処理チップ(iMX)が一体となったSoCです。
カラオケの映像処理や演奏以外の音声処理を担当していると思います。
「SAMSUNG 646 K4M563233G-HN75 AQJ490P2」 SAMSUNG K4M563233G-HN75 2M*32bit*4bank 256Mbit Mobile-SDRAM
DSP用のSDRAMです。
「dream SAM2133B」 Atmel ATSAM2133B Dream Sound Synthesis 64ポリ エフェクト付きサウンドシンセサイザ
外付けの音色サンプリング波形ROMを用意するだけで演奏できます。
カラオケの伴奏や効果音を担当しています。
基板を軽く調べたところ、DSP→ATSAM2133Bへの演奏データの受け流しはMIDIでした。
試しにATSAM2133Bの100pin(MIDI IN)に任意のMIDIデータを流したところ、任意の曲を演奏できました。
音質はまあまあ(ピアノの音色はいまいち)ですが、簡単な改造でカラオケマイクがMIDI音源モジュールになります。
100pin(MIDI IN)はQFPの端に位置しているので、はんだ付けの難易度は低いと思います。
100pin(MIDI IN)だけ少し持ち上げてMIDI入力すると良さそうです。
時間がたつとカラオケマイクが勝手に電源OFFになるので、そこをどうにかした方が良さそうです。
ATSAM2133Bのデータシートには詳しいことは書かれておらず詳細は不明ですが、MIDIのコントロールチェンジでいろいろエフェクトできるようです。
パンポットやステレオリバーブ、ビブラートができることは確認しました。いろいろ遊べそうです。
MPU401モード(D0~D7, A0, /WR, /RD, /CS)でも演奏できます。
MPU401コマンド
MIDIとMPU−401 ローランド
日本音響学会誌 41巻(1985)6号 p. 416-418
当時のカタログページ
夢チップシリーズは他にもいろいろあるようです。
ATSAM2133Bは夢チップの中でも低グレードのもののようです。
「MX E065144 GSS2133TS2MP 2T819303」 MX GSS2133-TS2M 容量不明 ATSAM2133B用音色サンプルデータ+ファームウェア MaskROM
容量は1MBから16MBのいずれかでしょう。
「5340CZZ XLH0607」 CIRRUS LOGIC CS5340-CZZ 24bit 192KHz ステレオADC
「380 93Y」 詳細不明 降圧チョッパコントローラ?
・LCD&キー入力ボード
「NEC D78F0511 (T)」 μPDD78F0511 78K0/KC2マイコン Flash:16KB, RAM768B
プログラムメモリがフラッシュメモリなので、再利用できそうです。
・拡張チップ
Z-PKSW2G
ダウンロード楽曲格納チップ
ST2
追加楽曲チップ 歌謡曲100曲
FM送信チップ
Z-PKSW2G
「SAMSUNG 616 K9F5608U0D PCB0」 SAMSUNG K9F5608U0D 32M*8bit 256Mbit NANDフラッシュメモリ
ST2
「MXIC MX29LV320EBTI-70G T133781 3N823000」 MX MX29LV320EBTI-70G 4M*8bit / 2M*16bit 32Mbit フラッシュメモリ
FM送信チップ
「BH1415F」 ROHM BH1415F ステレオ音声FMトランスミッタ
・MIDI音源モジュールへ改造する
ということで、ATSAM2133B + GGSS2133-TS2M MIDI音源モジュール化への改造をしてみました。
ATSAM2133Bを使ったパーソナルカラオケ(カラオケマイク、メーカ問わず)であれば、この改造と同様な手順でMIDI音源モジュール化できると思います。
改造可能な機種の見分け方は、冒頭で触れた拡張カートリッジのコネクタ形状が本機種と同じであること確認すると良いです。
もちろんATSAM2133Bが必ず入っているとも限りいませんが、高確率でATSAM2133Bが入っていると思います。
➀ATSAM2133Bの100pin(MIDI IN)の足のみ基板から持ち上げる または 100pin(MIDI IN)と接続されたパターンをカットする
この作業が一番難易度が高いです。
ATSAM2133Bの100pin(MIDI IN)のパターンが出ていればパターンカットで済みます。
機種によってはATSAM2133Bの下へパターンが伸びているので、はんだごてとピンセットを使い100pin(MIDI IN)の足を持ち上げて基板パターンから離します。
持ち上げた足と基板の間にポリイミドテープを挟んだら、この足にポリウレタン線などの細い線をはんだ付けします。
➁MIDI受信まわりの回路を追加する
マイク内にスペースが余っていればMIDI受信まわりの回路を入れ込むことができます。
Z-PK11G(S)の場合、隙間が少しあったので、そこにフォトカプラなどを入れ込みました。
フォトカプラはPC900などを推奨していますが、立ち上がりと立ち下がりが遅いPC817でも動作します。
今回は表面実装のPC817を使いました。
Z-PK11G(S)の例
・回路図
マイク入力まわりのパッドとランドを利用して抵抗とフォトカプラを付けました。
もともと付いていたマイクの配線と3つの表面実装の部品FB1, FB2, RV1を撤去しています。
➂オートパワーオフを無効にする
無操作の場合オートパワーオフにより勝手に電源が切れてしまいます。
防止するには何かキー入力をし続けるようにしなければいけません。
手っ取り早いのが特定のキーボタンをショートさせることでしょうか。
以上で、改造が完了です。
電源ONの後、しばらくするとMIDI入力を受け付けます。
ミニジャック端子から音声信号が出力されていれば成功です。
今回のMIDI音源モジュール化改造例はZ-PK11Gでしたが、ATSAM2133Bが入ったカラオケマイクであれば機種問わずMIDI音源モジュール化が可能だと思います。
少しチープ差が漂う音源ですが、まあ悪くはないです。
カラオケマイクを入手したらMIDI音源モジュール化の改造にぜひ挑戦してみてください。
特殊なエフェクトや内部パラメータの変更は、MIDIのコントロールチェンジを利用します。
NRPN(コントロールチェンジ番号High:63h, Low:62h)に変更したいパラメータの種類14bit、データエントリ(06h)にパラメータ7bitをセットします。
dreamチップの場合、コントロールチェンジNRPNのHigh:63hには37h、Low:62hには00h~5Fhをセットします。
コントロールの内訳はATSAM9773とほぼ同じと予想しています。
ATSAM9773のNRPNは入手可能なので各自調べてください。
ATSAM2133B用音色サンプルデータROMは、機種によらずGSS2133-TS2が使われている場合がほとんどで、機種ごとの音色の違いを楽しむことは難しいでしょう。
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